山梨県立北杜高等学校 > 教育活動 > 生物資源系列 > 縄文遺産の資源性を探る【北杜高校の縄文世界】 2025年2月12日カテゴリー: 生物資源系列 教育活動 縄文遺産の資源性を探る【北杜高校の縄文世界】 総合学科生物資源系列3年の「地域資源活用」は今年度から始まった科目です。 この授業は農業の学習をベースとして地域の自然、文化、産業、風土など様々な資源に目を向け、活用する力と視点を学びます。 今回は縄文遺産についての学習を紹介します。 なぜ縄文?と思いますよね。 実は、北杜高校の敷地内には「原町農業高校前遺跡」という遺跡があり、発掘された土器の一部は校内に展示されています。 遺跡の名前は地域の小字の「原町」と、北杜高校の前身となった「峡北農業高校」の名前に由来します。 学校の統合に際して校舎や農場の改修が進められたおりに発掘調査が行われ、主に縄文時代中期(4000~5000年くらい前)に大規模な集落があったことが分かっています。 学習に用いない手はありません。 縄文時代を考えることにはどんな学びがあるでしょうか。 一つの切り口として、自然環境と人々の暮らしについて考えることができます。 北杜高校は八ヶ岳南麓の台地上にあります。 縄文時代の人々は洪水の多い低地を避けて安定した高所に定住していました。 近くに川があって水資源に恵まれ、豊かな落葉広葉樹の生態系を食料源としていたと考えられます。 また、当時は地球が今よりも温暖なフェーズだったため、今は冷涼な八ヶ岳南麓地域もかつては温かかったと考えられています。 このことに加えて、八ヶ岳で産出する黒曜石は石器の材料に、火山灰に由来する粘土は土器の材料として用いられていました。 このように、縄文時代の人々も、その土地の様々な資源を活用して暮らしていたことが分かります。 そして、考えるきっかけを私たちに与えてくれるものを「学習資源」と言います。 なお、山梨から長野にかけて存在していた縄文時代の文化には類似性があり、これらの遺跡群は「星降る中部高地の縄文世界」という名で文化庁から日本遺産としての指定を受けています。 ご興味があれば地域の縄文遺跡をお探しいただければと思います。 実際の学習活動として、10月に山梨県立考古博物館に見学に行きました。 館内には多くの土器や土偶などの遺物が展示されており、北杜高校の敷地から出土したものも見ることができました。 日常では見かけない品々ですが、私たちのルーツやアイデンティティを支えている歴史の厚みを感じます。 いろんなモチーフがあって面白いですね。 また、勾玉づくりと火起こしも体験させていただき、古代の人々の暮らしを考える機会を得ることができました。 12月からは土器作りをおこないました。 土器の材料は粘土と砂です。 これらを混ぜ合わせることで焼く時の割れを防ぐことができます。 竹で作ったへらなどを使って成形し、2週間程度乾燥させてから野焼きで焼きました。 土器や土偶を作ろうとする時、生徒は自分の知っているなんらかのモチーフを表現しようとする傾向が見られます。 必ずしも縄文土器らしいものを作るとは限りません。 それでは縄文を学んでいることにならないのかというと、そうではありません。 縄文時代の人々も、その当時流行っていたデザイン手法を互いに模倣し合っていたと考えられるからです。 ただ、そのデザインの読み方は私たちには伝えられていません。 粘土をこねて手の中で形を作っていくことの手触りや、焚火の中で焼いていく温度などから刺激される感性は、5000年を隔てても変わるものではないと思われます。 仕上がった土器や土偶は、遺跡から出土した土器と同じショーケースに展示しています。 学校内外の皆様にご覧いただければ幸いです。
総合学科生物資源系列3年の「地域資源活用」は今年度から始まった科目です。
この授業は農業の学習をベースとして地域の自然、文化、産業、風土など様々な資源に目を向け、活用する力と視点を学びます。
今回は縄文遺産についての学習を紹介します。
なぜ縄文?と思いますよね。
実は、北杜高校の敷地内には「原町農業高校前遺跡」という遺跡があり、発掘された土器の一部は校内に展示されています。
遺跡の名前は地域の小字の「原町」と、北杜高校の前身となった「峡北農業高校」の名前に由来します。
学校の統合に際して校舎や農場の改修が進められたおりに発掘調査が行われ、主に縄文時代中期(4000~5000年くらい前)に大規模な集落があったことが分かっています。
学習に用いない手はありません。
縄文時代を考えることにはどんな学びがあるでしょうか。
一つの切り口として、自然環境と人々の暮らしについて考えることができます。
北杜高校は八ヶ岳南麓の台地上にあります。
縄文時代の人々は洪水の多い低地を避けて安定した高所に定住していました。
近くに川があって水資源に恵まれ、豊かな落葉広葉樹の生態系を食料源としていたと考えられます。
また、当時は地球が今よりも温暖なフェーズだったため、今は冷涼な八ヶ岳南麓地域もかつては温かかったと考えられています。
このことに加えて、八ヶ岳で産出する黒曜石は石器の材料に、火山灰に由来する粘土は土器の材料として用いられていました。
このように、縄文時代の人々も、その土地の様々な資源を活用して暮らしていたことが分かります。
そして、考えるきっかけを私たちに与えてくれるものを「学習資源」と言います。
なお、山梨から長野にかけて存在していた縄文時代の文化には類似性があり、これらの遺跡群は「星降る中部高地の縄文世界」という名で文化庁から日本遺産としての指定を受けています。
ご興味があれば地域の縄文遺跡をお探しいただければと思います。
実際の学習活動として、10月に山梨県立考古博物館に見学に行きました。
館内には多くの土器や土偶などの遺物が展示されており、北杜高校の敷地から出土したものも見ることができました。
日常では見かけない品々ですが、私たちのルーツやアイデンティティを支えている歴史の厚みを感じます。
いろんなモチーフがあって面白いですね。
また、勾玉づくりと火起こしも体験させていただき、古代の人々の暮らしを考える機会を得ることができました。
12月からは土器作りをおこないました。
土器の材料は粘土と砂です。
これらを混ぜ合わせることで焼く時の割れを防ぐことができます。
竹で作ったへらなどを使って成形し、2週間程度乾燥させてから野焼きで焼きました。
土器や土偶を作ろうとする時、生徒は自分の知っているなんらかのモチーフを表現しようとする傾向が見られます。
必ずしも縄文土器らしいものを作るとは限りません。
それでは縄文を学んでいることにならないのかというと、そうではありません。
縄文時代の人々も、その当時流行っていたデザイン手法を互いに模倣し合っていたと考えられるからです。
ただ、そのデザインの読み方は私たちには伝えられていません。
粘土をこねて手の中で形を作っていくことの手触りや、焚火の中で焼いていく温度などから刺激される感性は、5000年を隔てても変わるものではないと思われます。
仕上がった土器や土偶は、遺跡から出土した土器と同じショーケースに展示しています。
学校内外の皆様にご覧いただければ幸いです。