2025年2月10日カテゴリー:

PCR実験をしてみよう

 総合学科生物資源系列3年の「植物バイオテクノロジー」の授業では、1月に遺伝子に関する学習としてPCR実験を体験しました。
 PCRはPolymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略で、遺伝子を調べる手法として医療や科学の現場で近年盛んにおこなわれています。コロナ禍には人体に感染しているウイルスを特定するために用いられました。高校で学習する生物の教科書にも必ず紹介されています。今回は簡易な実験キットを利用してこの実験手法を体験しました。

 

実験手順の説明

 

 PCR実験では様々な装置を使います。用いる試料や薬品は少量なので、マイクロピペットという道具を使って測り取りました。DNA資料は酵素と塩基を混ぜてサーマルサイクラーという機械に入れます。この機械はプログラムを設定することでDNAのコピーが増幅されるのに適した3つの温度を繰り返すので、元が少量のDNAでも一時間程度で100万倍に増えます。

 

 

 

 サーマルサイクラーで増やしたDNAのサンプルが異なる生物同士でどのように違うかを見比べるために電気泳動装置を使います。DNAは電気的に+を帯びているので、電流を流すと少しずつ動きます。この性質を利用してDNAを見分けます。電気泳動にはアガロースゲルというゼリーも必要となるので、授業ではこれも作りました。

 

 

 アガロースゲルができあがったらこれを電気泳動装置に浸します。あらかじめ作っておいたゲルの小さな溝にDNAサンプルを上手に流し込み、電流を流して待つこと40分。DNAが大きさごとに異なる流れ方をしました。最後にUVトランスイルミネーターという装置で紫外線を当てると、DNAの線が浮かび上がりました。

 

 

 この授業の後、来年度の教材となるユリやランの植物の準備を授業のメンバーでおこない、今年の植物バイオテクノロジーは終わりました。一年間、植物の培養技術や知識を学び、集大成として遺伝子実験をおこないました。担当した教員にとってもPCR実験を授業に取り入れるのは初めての試みで、全力で臨んだものでしたが、生徒もよくここまで学んで理解を深めてきたと思います。この学習は必ずしも日常生活で直接生かされるものではありませんが、社会を支えている技術への関心を持ち続けていただきたいと願っています。